<MEN’S ITEM>
展示会放浪記 2020.3.25。
オリンピック延期が決まったと同時に都内で新型コロナ感染者が急増したまさに直前の日、私は東京展示会出張に赴いた。
残念ながらきっとこの日の出張が「2020AWコレクションを直に見て行う最後の出張になる」私は今そう思っております。
残念ですが、今はそれが最善の考え、大切な人に悪影響を運ぶ感染者、もしくは媒介者にならないための一つの策。
その分、自家用車で都内に入り、手洗いうがいを会場を出るたびに徹底し、必死の防御策をもって臨んだこの日の出張が幸いにもとても実り多きものであったことが一つの大きな手応えとなりました。
数回に分けてご報告させていただきます。
一回目は、デザイナー石川 俊介さによる「TEXT|テクスト」の展示会。
「正解を知らないのなら、ルールなんてとっぱらえばいい…」
10年前ぐらい前からよく耳にするようになった“Farm-to-Table”という言葉がある。農場からテーブルへ。簡単に説明すると生産者の顔が見える食材を使い、その土地で調理し提供する。いわゆるサステイナブルと呼ばれる考え方のひとつ。とりわけ食文化は、いつもファッションの何歩も先を進んでいて、サステイナブルに関してファッションはほぼ未知数に近い。“Farm-to-Closet” –農場からクローゼットへ–。この考え方こそ、デザイナーである石川俊介がText(テキスト)をはじめるに至った原点のようなものである。まずは納得できる素材の調達と生産方法。 するとアルゼンチンやインド、モンゴルなどさまざまな土地にたどり着いた。 そのひとつがペルーの高山地帯だ。標高4000m以上、雄大な土地には、自然の草木を食んで育ったアルパカが悠々と暮らす。そこで出会った希少な黒毛のアルパカに魅了された石川。そして、世界的にもごく稀なブラックアルパカ100%の生地作りを始めた。どんな些細な工程も他人任せにすることなく、原料を自ら調達し、工場にも直談判。柔らかく、そして繊細な黒毛をコートやパンツにできるほどの丈夫な生地に仕立てることは、石川本人はもちろんのこと、職人にとっても初めての経験だった。ブラックアルパカに限らず、Textではニットやデニム、ギャバジンなど、さまざまな生地に対して、時間を惜しむことなく作りあげていく。石川がそれぞれと交わす密なコミュニケーションは、決して容易なことではない。しかし手間がかかったっていい。 そうすることで農場も工場も、そして袖を通す誰もが、その洋服が持つ文脈の一部になれる。ファッションにおけるサステイナブルとは何か、石川は自問自答を続ける。発展途上の分野ゆえ、ある日突然、ダメとされていたやり方が良いと思えることもあれば、正解が思わぬことで不正解になることもある。 しかしどうだろう。だからこそ、自由に思い描くことができるのだ。なにが正しいかなんて、無理に答え合わせをしないほうがかえって楽しかったりする。
こちらは同ブランドの公式サイトにある”about”から転載させていただいたもの。
そして、その”about”に貼られている飛行機の写真には吹きだしで”受け継がれる洋服を目指しました”そうか書かれている。
そう、「TEXT|テクスト」はデザイナー石川さんが20年以上のデザイン生活の集大成として、そしてファッション産業がこれから目指して行かねばならない循環型のもの作りとして、これまで培った知識と経験をフル動員して極めて妥協のない服作りをするブランド。
”受け継がれる洋服を目指しました”とは、総論としてはきっと次世代に向けてのメッセージであり、各論としては私が子どもに引き継げる服と言うセンテンスもあるであろうと私は感じます。
まさにこれは私が今の当店と未来の当店のバランスを模索しながらも形にしたい私の50代に向かっての洋服屋の形。
大学を卒業と同時に入ったアパレルの世界、私も25年のキャリアの集大成としてこれからのお店作りに挑む心構え。
そう思った私はデザイナー石川さんが今考えている思いを感じたくてお伺いさせていただきました。
染色を一切していないナチュラルカラー、ブラックアルパカ100%で編み上げたニットベスト。
ペルーのオーガニックピマコットンで仕立てたカットソー。
ペルーのベビーアルパカを無染色で仕立てたスカーフ。
そして、一生涯のコートになるであろうオーガニックで栽培されたインド綿ギャバジンステンカラーコート。
石川さん曰く、「10年20年と古着のような風格が出るまで着て欲しい」と言うアイテム。
本当にどのアイテムもデザイン・素材・生産と確かなルーツから生まれたアイテムで、唸るような気持ちで説明をお聞きした。
2020AWでは、写真でご紹介したアイテムを厳選してセレクトするつもり。
そして、ゆっくりと時間を掛けながら石川さんの捉えられている世界観を当店でご紹介して行ければと考えております。
丁度、今月発刊のこちらの雑誌で「TEXT|テクスト」が紹介されておりました。
私がサンプルサイズ2を着用しているステンカラーコートのサイズ0をモデルさんが着られておりました。
抜群に雰囲気があります!
そして、「TEXT|テクスト」と並んで紹介されていたのがディレクター久崎さんによる「Aton|エートン」。
こちらも当店が2020AWコレクションから新規で取り扱いさせていただきますレーベルです。
どちらも企画手が世界・日本各地を足で動き、生産の現場と共に作り上げるシンプルなカジュアルウェア。
拘り=男臭さのある、もしくはオーセンティックなと言うベクトルは私のセレクトではありませんので、そう行ったものではない、モノづくりの確かさの裏づけがあるシンプルなデザインの心地良く着ることの出来る服、両ブランドさまともにそんなもの作り。
男性女性ともにお楽しみいただける良質な服たちです。